
会社の法人実印が見当たらないときは、「もう少し探してから対応しよう」と放置せず、紛失した可能性が高い段階で速やかに対処することが重要です。
法人実印は、重要な契約や不動産取引、登記手続きなどに使われる会社の正式な印鑑です。
第三者に印鑑そのものを拾われただけで、直ちに会社名義の契約が自由にできるわけではありません。しかし、印鑑カードや印鑑証明書、会社情報が分かる書類なども一緒に紛失している場合は、悪用される危険性が高くなります。
法人実印を紛失した場合は、新しい法人実印を作成し、法務局へ「印鑑(改印)届書」を提出するのが基本的な対応です。
新しい印鑑をすぐに用意できない場合は、先に現在登録されている印鑑の廃止を届け出る方法もあります。
この記事では、法人実印を紛失した直後に確認したいことから、新しい法人実印の作成、法務局への改印届、印鑑カードも紛失した場合の対応まで順番に解説します。
この記事の目次
法人実印を紛失したら最初にすること
法人実印が見当たらないときは、まず印鑑を最後に使用した日時や場所を確認します。
社内で一時的に保管場所が変わっているだけなのか、社外へ持ち出したままなのか、盗難や置き忘れの可能性があるのかを整理しましょう。
特に確認したいのは、次の項目です。
- 法人実印を最後に使用した日時と書類
- 最後に使用した担当者
- 金庫、引き出し、書類保管庫の中
- 司法書士、税理士、金融機関などへ預けていないか
- 社外へ持ち出した記録がないか
- 印鑑カードも一緒に保管されていなかったか
- 印鑑証明書や登記事項証明書もなくなっていないか
十分に確認しても見つからず、紛失した可能性が高い場合は、法務局への改印または廃止の手続きを進めます。
紛失したときの基本対応
- 社内や最後に使用した場所を確認する
- 印鑑カードや印鑑証明書も紛失していないか確認する
- 盗難の可能性があれば警察への届出を検討する
- 新しい法人実印を作成する
- 法務局へ印鑑(改印)届書を提出する
- 必要に応じて取引先や金融機関へ連絡する
紛失ではなく盗難の可能性がある場合や、印鑑と会社関係書類をまとめて盗まれた場合は、警察へ相談し、遺失届や被害届など必要な対応を確認しましょう。
法人実印を紛失すると悪用される?
法人実印を紛失したからといって、その印鑑を拾った人が自由に会社名義の契約を成立させられるわけではありません。
重要な契約では、法人実印の押印だけでなく、印鑑証明書、登記事項証明書、代表者の本人確認書類などを求められることがあります。
一方で、法人実印と次のものを一緒に紛失すると、悪用の危険性が高くなります。
- 印鑑カード
- 取得済みの印鑑証明書
- 登記事項証明書
- 代表者の本人確認書類
- 会社名や所在地が分かる書類
- 白紙の委任状や契約書
- 法人銀行印や通帳
また、偽造された契約への対応や、契約相手との事実確認など、会社側に大きな負担が生じる可能性があります。
「印鑑だけだから大丈夫」と判断せず、早めに現在の印鑑を使えない状態にすることが大切です。
紛失したものによって必要な手続きが異なる
法人印鑑の紛失手続きは、何を紛失したかによって異なります。
| 紛失したもの | 主な対応 |
|---|---|
| 法人実印のみ | 新しい法人実印を作り、法務局へ改印届を提出する |
| 印鑑カードのみ | 印鑑カードの廃止届と、新しい印鑑カードの交付申請をする |
| 法人実印と印鑑カード | 改印届、印鑑カード廃止届、印鑑カード交付申請書を提出する |
| 法人実印を紛失し、新しい印鑑がすぐ作れない | 現在登録されている印鑑と印鑑カードの廃止を届け出る |
法人実印だけを紛失し、印鑑カードが手元に残っている場合は、改印後も現在の印鑑カードを引き続き使用できることがあります。
ただし、印鑑カードも紛失した場合は、現在のカードを廃止したうえで、新しいカードの交付申請が必要です。
新しい法人実印をすぐ作れる場合の改印手続き
新しい法人実印をすぐに用意できる場合は、法務局へ「印鑑(改印)届書」を提出します。
改印とは、法務局へ登録している法人実印の印影を、新しい印鑑の印影へ変更する手続きです。
新しい印鑑を作成しただけでは、法務局に登録されている印影は変更されません。必ず改印届を提出する必要があります。
改印手続きの基本的な流れ
- 新しい法人実印を作成する
- 代表者個人の印鑑証明書を取得する
- 印鑑(改印)届書を準備する
- 新しい法人実印と代表者個人の実印を所定欄に押す
- 必要書類を法務局へ提出する
- 改印後、必要に応じて法人の印鑑証明書を取得する
改印届の提出先は、原則として会社の本店所在地を管轄する登記所です。
代理人が手続きする場合は、委任状が必要になります。届書には委任状欄が設けられている様式もあります。
紛失した印鑑を押す必要はない
法人実印を紛失しているため、改印届に古い法人実印を押すことはできません。
その代わり、印鑑を届け出ている代表者個人の実印を押し、その個人実印について市区町村が発行した印鑑証明書を添付します。
紛失した法人実印がなくても、所定の書類を揃えることで改印手続きを行えます。
新しい法人実印をすぐ用意できない場合
新しい法人実印の完成まで日数がかかる場合や、印鑑の仕様をすぐに決められない場合は、現在登録されている印鑑の廃止を先に届け出ることができます。
印鑑の廃止手続きを行うことで、紛失した印鑑を法務局への届出印ではない状態にできます。
印鑑カードの交付を受けている場合は、印鑑の廃止とあわせて印鑑カードの廃止も必要です。
一般的には、次のものを準備します。
- 印鑑・印鑑カード廃止届書
- 代表者個人の実印
- 代表者個人の印鑑証明書
- 手元に残っている印鑑カード
- 代理人が提出する場合は委任状
ただし、会社の状況によっては、書面による登記申請のために法人実印の届出が必要になる場合があります。
今後予定している登記や契約がある場合は、印鑑を廃止したままにせず、新しい法人実印を早めに作成して届け出ましょう。
印鑑カードも紛失した場合の手続き
印鑑カードは、法務局で会社の印鑑証明書を取得するときに使用するカードです。
法人実印と印鑑カードの両方を紛失した場合は、改印届だけでなく、紛失した印鑑カードの廃止と、新しい印鑑カードの交付申請も必要です。
提出する書類は、主に次の3つです。
- 印鑑(改印)届書
- 印鑑・印鑑カード廃止届書
- 印鑑カード交付申請書
新しい印鑑カードの交付を受けた後は、そのカードを使用して法人の印鑑証明書を取得できます。
紛失した印鑑カードが後日見つかった場合でも、廃止済みのカードは使用できません。
印鑑カードだけを紛失した場合
法人実印は手元にあり、印鑑カードだけを紛失した場合は、法人実印を改印する必要はありません。
この場合は、紛失した印鑑カードの廃止届と、新しい印鑑カードの交付申請書を提出します。
各書類には、現在法務局へ届け出ている法人実印を押印します。
改印届に必要なもの
法人実印を紛失して改印する場合は、一般的に次のものを準備します。
| 必要なもの | 内容 |
|---|---|
| 新しい法人実印 | 今後、法務局へ届け出る会社の印鑑 |
| 印鑑(改印)届書 | 法務局の所定様式を使用する |
| 代表者個人の実印 | 市区町村へ印鑑登録している個人の実印 |
| 代表者個人の印鑑証明書 | 原則として作成後3か月以内のもの |
| 会社法人等番号 | 改印届書への記入に使用する |
| 委任状 | 代理人が手続きを行う場合に必要 |
印鑑カードも紛失している場合は、印鑑カード廃止届と印鑑カード交付申請書も必要です。
法人の種類、印鑑提出者の資格、提出方法などによって必要書類が異なることがあります。提出前に管轄法務局へ確認すると安心です。
紛失後に作る法人実印の選び方
法人実印を作り直すときは、紛失した印鑑とまったく同じ印影を再現するのではなく、印影を変更して作成することをおすすめします。
同じ印影を再現すると、紛失した古い印鑑と新しい印鑑の区別がつきにくくなります。
印影を変える方法には、次のようなものがあります。
- 書体を変更する
- 文字の配置を変更する
- 外周の会社名の配置を調整する
- 内側の役職名を確認する
- 印鑑の大きさを変更する
一般的な法人実印の彫刻内容
法人実印は、二重の円で作られることが多く、外側に会社名、内側に代表者の役職名を彫刻します。
株式会社の場合、内側には「代表取締役印」と彫刻するのが一般的です。
合同会社では「代表者印」や「代表社員之印」などが使われます。
現在の登記内容と役職名を確認したうえで、新しい法人実印を注文しましょう。
耐久性も確認する
法人実印は長期間使用するため、印材の耐久性も重要です。
落下や欠けに強い印材を選びたい場合は、チタン製の法人印鑑も選択肢になります。
黒水牛や柘などの印材を選ぶ場合は、印面や縁が欠けないよう、ケースに入れて適切に保管しましょう。
法人銀行印や角印を紛失した場合
会社で使う印鑑には、法務局へ届け出る法人実印のほか、法人銀行印や角印があります。
それぞれ届出先と対処方法が異なるため、紛失した印鑑の種類を確認しましょう。
法人銀行印を紛失した場合
法人銀行印を紛失した場合は、口座を開設している金融機関へ速やかに連絡します。
銀行印の紛失手続きや利用停止、新しい届出印への変更方法は、金融機関によって異なります。
通帳、キャッシュカード、インターネットバンキングの情報なども一緒に紛失している場合は、そのことも金融機関へ伝えましょう。
法人実印と法人銀行印を兼用している場合は、法務局と金融機関の両方で変更手続きが必要になります。
角印を紛失した場合
角印は、請求書、見積書、納品書、領収書などに使用される会社の印鑑です。
通常、法務局や金融機関へ登録する印鑑ではないため、法人実印のような公的な改印手続きはありません。
ただし、紛失した角印が不正な請求書などに使われる可能性はあります。
新しい角印は、以前のものと区別できる印影で作成し、必要に応じて社内や取引先へ紛失した事実を共有しましょう。
改印後に確認しておきたいこと
法務局への改印届を提出した後は、新しい法人実印を使用する体制へ切り替えます。
- 新しい法人実印の保管場所を決める
- 印鑑を使用できる担当者を限定する
- 印鑑管理簿へ変更日を記録する
- 必要に応じて新しい印鑑証明書を取得する
- 紛失した印鑑が見つかっても使用しない
- 進行中の契約や登記手続きに影響がないか確認する
- 司法書士や金融機関へ預けている印影情報を確認する
改印前に取得した法人の印鑑証明書については、提出先が受け付けるかどうかを確認してください。
重要な契約や融資手続きを進めている場合は、法人実印を変更したことを相手方へ伝え、新しい印鑑証明書が必要か確認しましょう。
法人印鑑の紛失を防ぐ管理方法
法人印鑑の紛失を防ぐには、印鑑を保管するだけでなく、誰がいつ使用したかを記録する仕組みが必要です。
法人実印と印鑑カードを別々に保管する
法人実印と印鑑カードを同じ場所に保管すると、盗難や災害が起きたときに両方を同時に失う可能性があります。
悪用の危険性を抑えるためにも、法人実印、印鑑カード、印鑑証明書は別々に管理しましょう。
使用者と持ち出しを記録する
法人実印を使用するときは、次の内容を記録すると管理しやすくなります。
- 使用日
- 使用者
- 押印した書類
- 契約相手
- 持ち出した時間
- 返却した時間
小規模な会社であっても、口頭だけで管理せず、簡単な印鑑管理簿を用意することをおすすめします。
使用後はすぐに元の場所へ戻す
法人実印を机の引き出しや書類の上に置いたままにすると、ほかの書類に紛れたり、誤って持ち出されたりする可能性があります。
使用後はその場でケースに入れ、決められた保管場所へ戻しましょう。
法人印鑑の紛失についてよくある質問
法人実印を紛失したら、まず法務局へ電話すべきですか?
紛失の可能性が高い場合は、新しい法人実印を準備しながら、管轄法務局へ必要書類や提出方法を確認すると安心です。
新しい印鑑がすぐ用意できない場合は、現在登録されている印鑑の廃止手続きについて相談しましょう。
法人実印を紛失したら警察への届出は必要ですか?
社内での置き忘れではなく、外出先で紛失した場合や盗難の可能性がある場合は、警察へ相談してください。
特に印鑑カード、印鑑証明書、通帳、本人確認書類なども一緒に紛失した場合は、早めの対応が必要です。
紛失した法人実印と同じ印影で作り直せますか?
同じ会社名と役職名で作成することはできますが、紛失した印鑑と区別するため、書体や文字配置などを変更することをおすすめします。
まったく同じ印影を再現するのではなく、新しい印影で改印した方が管理しやすくなります。
改印届には紛失した古い法人実印が必要ですか?
紛失している古い法人実印を用意する必要はありません。
新しく届け出る法人実印、代表者個人の実印、代表者個人の印鑑証明書などを使用して手続きします。
印鑑カードが手元にあれば、そのまま使えますか?
法人実印だけを紛失し、印鑑カードが手元に残っている場合は、改印後も現在の印鑑カードを引き続き使用できることがあります。
ただし、会社の状況や同時に行う手続きによって異なる可能性があるため、提出先の法務局へ確認してください。
印鑑カードだけを紛失した場合も法人実印を作り直しますか?
法人実印が手元にある場合は、法人実印を作り直す必要はありません。
紛失した印鑑カードを廃止し、新しい印鑑カードの交付を申請します。
後から紛失した法人実印が見つかったら使えますか?
改印届を提出した後は、見つかった古い印鑑を法人実印として使用しないでください。
誤使用を防ぐため、廃棄するか、旧印であることが分かる状態で新しい法人実印とは別に保管しましょう。
法人実印の改印に登記申請は必要ですか?
法人実印の印影を変更する手続きは、通常の役員変更や本店移転などの登記申請とは異なり、印鑑(改印)届書によって行います。
ただし、代表者変更などの登記と同時に印鑑を届け出る場合は、手続きが異なることがあります。
法人実印の紛失に気づかず時間が経ってしまいました
時間が経過していても、紛失した法人実印が見つからない場合は、速やかに改印または廃止の手続きを進めましょう。
不審な契約や書類がないか、印鑑証明書の使用状況、金融機関の取引なども確認してください。
まとめ|法人実印を紛失したら早めに改印する
法人実印を紛失した場合は、社内や最後に使用した場所を確認したうえで、見つからなければ早めに法務局への手続きを進めましょう。
新しい法人実印をすぐに用意できる場合は、印鑑(改印)届書を提出して、新しい印影へ変更します。
新しい法人実印をすぐに用意できない場合は、紛失した印鑑の廃止を先に届け出ることもできます。
この記事のまとめ
- 法人実印を紛失したら、印鑑カードや印鑑証明書の有無も確認する
- 新しい法人実印を作っただけでは登録印は変更されない
- 新しい印鑑を法務局へ登録するには改印届が必要
- 改印には代表者個人の実印と印鑑証明書が必要になる
- 新しい印鑑をすぐ用意できない場合は印鑑の廃止を届け出られる
- 印鑑カードも紛失した場合は廃止と再交付の手続きが必要
- 法人銀行印を紛失した場合は金融機関へ速やかに連絡する
- 新しい法人実印は紛失した印鑑と異なる印影で作るのがおすすめ
法人実印の紛失後は、手続きの早さだけでなく、新しい印鑑の印影や耐久性、今後の保管方法も重要です。
法人実印・法人銀行印・角印をまとめて見直し、会社の印鑑管理体制を整えましょう。
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